江別市にある酪農学園大学の敷地と野幌森林公園の間にある丘の上のはずれに、「北海道林木育種場旧庁舎」という古い建物が残されています。
戦前から残る貴重な巨大建築物で、なんとかつては昭和天皇も行幸されたという歴史もあるそうです。
そんな江別市民ですらあまり知られていない(Wikipediaにすら載っていない!)「林木育種場旧庁舎」がどんな所なのか?
実際に行って建物内外を見学してきましたのでリポートします!
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もくじ
江別市に残る歴史的建造物「北海道林木育種場旧庁舎」に行ってみた!
出入口の古い石積みの門を過ぎると見えてくる「北海道林木育種場旧庁舎」。
珍しい縦長の窓が並んだ寄棟屋根の大きな建物が立っています。
壁には柱が露出した形のいわゆる「ハーフティンバー様式」が見られます。
その木組みだけ見てもかなりの古さを感じさせます。
出入口扉の周りは立派な石積みで、この部分も建築当時のままだそうです。
脇には「北海道林木育種場旧庁舎 平成13年8月28日 文化庁登録文化財 登録番号 第01-0030号 江別市教育委員会」と書かれた看板があります。
正面入口上部の破風部分。
ハーフティンバーの他にも一工夫された窓枠なども興味深いですね。
建物西側からみた壁面。
奥行きもかなりあるのが分かります。
建物西側の破風部分。
窓下に付いている照明もかなり古そうです。
建物東側の側面。
かつては1階扉に屋根付きの通路があって、手前にさらにもう一棟建物が立っていたそうです。
扉周りの壁を見るとその痕跡が見て取れます。
建物東側の破風部分。
木造の窓枠が昔のまま残っているのが素晴らしいですね。
建物東側の別視点。
西と東で非対称な造りになっているのが分かります。
建物南側全体。
こちらは二階の壁全体がリフォームされており、中央階段の窓枠がアルミサッシのものに変えられています。
ちなみに建物1階部分のほぼ全ての窓枠はアルミサッシに変えられているようで、2階の窓枠はかなりの部分で木枠のままでした。
北海道林木育種場旧庁舎とは?建物の歴史
北海道林木育種場旧庁舎とはどういった歴史のある建物なのでしょうか?
その歴史が詳しく書かれた看板が建物の前に立っていましたので引用します。
登録有形文化財 北海道林木育種場旧庁舎
平成十三年八月二十八日登録この建物は、昭和二年十一月に内務省所管林業試験場として建てられました。林業試験場は、明治四十一年六月に創設され、当初庁舎は江別村志文別(現在の江別市西野幌)にありました。当時の試験場には、三四二六haの試験林があり、森林の維持や病害虫の防除、木材の利用法など様々な研究・実験が行われました。
林業試験場は、その後組織改編や名称変更を経て昭和三十二年に林野庁北海道林木育種場となり、平成八年に新庁舎が建設されるまで林業の研究施設として利用されました。
この旧庁舎は、石材と木材を組み合わせた構造で、大正~昭和初期に流行した ※ハーフテンバー と呼ばれる建築様式が用いられています。内部は木製ドア、腰壁板、窓枠に優れた意匠が見られるほか、「研ぎ出し」工法による階段手摺などに高度な左官工事がなされています。
北海道林木育種場旧庁舎は、現存する数少ない大正~昭和初期の庁舎建築物の一つであり、また北海道の林業史を物語る上でも貴重な建物です。
※柱・梁・筋交い等の軸を組み立て、その間に壁材を詰め込む様式
平成十三年八月 江別市教育委員会
林木育種場旧庁舎の建物は「昭和2年(1927年)」に建てられたということで、建物からは大正時代の雰囲気も感じられます。
現在は休憩室として利用可能(開放時間・注意事項)
この林木育種場旧庁舎は現在、1階の休憩室・談話室・トイレ・更衣室が一般の方も自由に利用することができます。
掲示内容は以下の通り。
<曜日と時間>
毎週土曜日・日曜日と国民の祝日(ただし、12月29日~1月3日は除かれます)
時間は午前9時30分から午後4時30分までです。<できない行為>
営業行為、宗教活動、政治活動、飲酒行為、占有行為(教育委員会の許可を得たものを除く)
<注意事項>
ごみは各自お持ち帰りください。
林木育種場旧庁舎の建物内部へ!
というわけで、林木育種場旧庁舎の中へ入ってみました。
扉を開けると「登録有形文化財」と書かれたプレートがはめ込まれた巨大な丸太がありました。
出入口扉を振り返ってみたところ。
天井が高いですね。
扉を開けてまず目に入ってくるのはこの中央階段。
今ではすっかり珍しくなった石研ぎ出し仕上げの手すりが目を引きます。
1階・東側
建物東側の廊下。
右側にトイレ・更衣室、左側に談話室・休憩室があります。
1階は改修されているためか、それほど古さを感じさせないですね。
1階「談話室・管理事務室」です。
1階「談話室・管理事務室」の別視点。
1階「休憩室」。
テーブル付きの椅子が複数ある他、畳敷きの小上がりもあり、ゆったりとした雰囲気です。
野幌森林公園を巡った後の休憩所としてかなり良さそうですね。
1階・西側
建物西側の廊下。
右側に文化財整理室、左側に会議室・書庫・資料保管庫があります。
会議室。20人位は入れそうです。
2階踊り場へ
再び中央階段に戻り、2階途中の踊り場まで登ってみます。
なお、2階は未改修で立入禁止となっています。
見学できるのはこの踊り場までで、そこから二階を見上げます。
いかにも古そうな扉と照明器具。
昭和天皇がご休憩された「特別応接室」
踊り場から見える正面の部屋は、なんと戦前に昭和天皇がご休憩で利用されたという「特別応接室」!
扉には「立入禁止 天井落下します」と書かれています…。
特別に扉を開けて中を見せてもらいました。
たしかに天井が一部剥がれ落ちてますね…。
こちらは未改修のままの状態を維持しているそうで、格調高いレトロな雰囲気が見て取れます。
こんな歴史ある建物が江別に残っているんですね~。
建物内でレトロ探し
林木育種場旧庁舎内では、そこかしこにレトロなものが残されています。
こちらは「ナショナル」のスピーカー。赤いロゴマークが付いたマニアックな一品。
「汽罐室(きかんしつ)」と書かれたプレート。いわゆるボイラー室のことです。
古い建物は装飾品から金具にいたるまで様々なレトロなものが見られるので楽しいですね。
林木育種場旧庁舎の外側には樹齢210年(!?)のイチイの木
林木育種場旧庁舎のちょうど正面に立っているイチイの巨木。
江別市保存樹木に指定されている古い木です。
樹齢は推定210年!
説明によると、「登満別にあった林業試験場が移転したときに移植され北海道林業の推移を見てきた樹木」とあります。
桜の木々
林木育種場旧庁舎の脇には桜の木が何本も植えられていたりします。
意外な桜の名所なのかもしれませんね。
謎の建物跡
桜の木々がある脇には、建物の基礎跡がありました。
かつてどんな建物が立っていたのでしょうか…。
美しい林とキノコ
出入口門の脇にある美しい林。
林木育種場旧庁舎は建物だけでなくその周りもなかなか魅力的です。
林の中には巨大なキノコがたくさん生えていました。
ずいぶん立派に育つものですね~。
森林総合研究所(独立行政法人)林木育種センター 北海道育種場
林木育種場旧庁舎の横にある「森林総合研究所(独立行政法人)林木育種センター 北海道育種場」。
旧庁舎の研究はこちらで引き継がれているのでしょう。
林木育種場旧庁舎の裏手に、野幌森林公園へと続く道が延びています。
右手は「遺伝資源保存園」として様々な樹木が植えられているようです。
こちらは林木育種場旧庁舎の門がある辺りから、酪農学園大学の農地を見下ろしたところ。
写真奥の方に国道12号線が走っています。
実に北海道らしい雄大な眺めですね!
こんなところにカフェでもあればな~なんて思いながら楽しい見学会を終えました。
※追記:カフェができたら良い…などと思っていたら、本当にカフェがオープンすることになりました!
北海道林木育種場旧庁舎に「珈房(こうぼう)サッポロ珈琲館・江別店」が2022年開業予定!詳細は以下の記事をご参照ください。
『北海道林木育種場旧庁舎』の説明付見学会(※要申込)
北海道林木育種場旧庁舎では10月に見学会が開催されるそうです。
観光ボランティアガイドによる説明付き見学会とのことですので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか?
説明付き一般公開の詳細は以下の通りです。
公開日時
2018年(平成30年)10月12日(金曜日)
午前10時から1時間程度
問合せ・申込み先
江別市教育委員会 生涯学習課
電話 011-381-1060
※要申込・先着35名、送迎バスは要予約(先着25名)
詳しくは以下の江別市公式サイトを御覧ください。
ドローン動画
ドローン撮影による空撮動画がありました。
※再生すると音が出ます
林木育種場旧庁舎保存・活用事業者募集中
江別市では「林木育種場旧庁舎」を民間で活用していただける事業者を募集しているとのことです。
詳細は江別市公式サイト「林木育種場旧庁舎活用のご案内」ページをご参照ください。
北海道林木育種場旧庁舎の場所・アクセス地図
住所:〒069-0836 北海道江別市文京台緑町561番地の2