
江別市では、雪の多い北海道でも効率よく太陽光発電を行うため、市役所本庁舎といずみ野小学校隣地の2カ所で、2009年から実証研究を続けています。
研究開始から16年以上が経過し、雪が滑り落ちやすい太陽光パネルの角度や、冬でも効率よく発電できる設置方法など、さまざまな成果が得られています。
江別市は2026年10月6日に研究紹介ページを更新しました。これまでの研究成果と、2026年5月にまとめられた最新の2025年度報告書をもとに、発電量の推移や現在の設備状況について紹介します。
もくじ
雪国の太陽光発電、江別市で2009年から実証研究
太陽光発電というと、住宅の屋根などに設置されたパネルを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし、北海道のような積雪の多い地域では、冬になるとパネルが雪に覆われ、発電できなくなることがあります。
そこで江別市では、雪が自然に滑り落ちるパネルの角度や設置方法を調べるため、2009年12月から実証研究を始めました。
研究施設は次の2カ所です。
| 研究施設 | 主な研究内容 |
|---|---|
| 江別市役所本庁舎 | 建物の壁に近い角度でパネルを設置し、発電効率を比較 |
| いずみ野小学校隣地 | パネルの傾斜角度や形状を変え、雪の落ちやすさや発電量を比較 |
市役所本庁舎には54枚、いずみ野小学校隣地には87枚の太陽光パネルが設置されています。

江別市役所本庁舎の太陽光パネル(出典:江別市「2025年度実証研究報告書」4ページ)
当初は国の事業として始まり、2010~2014年度は江別市や電力関連企業、北海道科学大学など6団体が共同で研究を進めました。
2015年度からは江別市が単独で研究を引き継ぎ、現在は主にパネルや設備の耐久性を調べています。
雪が滑り落ちやすい角度は45度以上 冬は垂直のパネルにも利点
これまでの研究では、雪国で太陽光発電を行う際に参考となる、興味深い結果が得られています。
特に注目したいのが、パネルの設置角度による違いです。

いずみ野小学校隣接地の太陽光発電研究施設(出典:江別市「2025年度実証研究報告書」5ページ)
いずみ野小学校隣地では、角度の異なるパネルを設置して雪の落ちやすさを比較。その結果、雪を滑り落ちやすくするには、45度以上の傾斜が有効であることが分かりました。
また、市役所本庁舎では、75度と90度(垂直)の2種類の角度で発電量を比較しています。
年間を通してみると75度のパネルの方が多く発電しましたが、雪の降る時期には90度のパネルの方が多く発電する結果も得られています。
これは、垂直のパネルには雪が積もりにくいことや、地面に積もった雪が太陽光を反射することなどが関係しています。
研究で分かった主な成果をまとめると、次のようになります。
| 研究で分かったこと | 結果 |
|---|---|
| 雪が滑り落ちやすい角度 | 45度以上が有効 |
| 市役所の壁面パネル | 年間では75度、積雪期には90度が有利な傾向 |
| パネルの形状 | 下側の枠に出っ張りがないタイプが落雪に有利 |
| 気温と発電効率 | 気温が低いほど発電効率が高まる傾向 |
| 角度を季節で変える方式 | 固定式より年間約9%発電量が増加した年度がある |
※数値は江別市の実証研究における結果で、設置環境や機器によって異なります。
北海道では雪や寒さが太陽光発電の弱点と思われがちですが、寒さによって発電効率が高まることや、雪面からの反射光を利用できる場合があることなど、雪国ならではの利点も確認されています。
夏と冬でパネルの角度を変えると、冬の発電量が28%増加
もう一つ興味深いのが、季節によって太陽光パネルの角度を変える研究です。
いずみ野小学校隣地では、年間を通じて33度に固定したパネルと、夏は20度、冬は60度に角度を変更するパネルを比較しました。
2013年度の研究では、角度を変更する方式の方が、固定式と比べて年間約9%、11月から3月までの冬期間には約28%多く発電する結果となりました。
| 比較項目 | 角度を変更する方式の結果 |
|---|---|
| 夏の設置角度 | 20度 |
| 冬の設置角度 | 60度 |
| 年間発電量 | 固定式より約9%増 |
| 冬期間(11~3月) | 固定式より約28%増 |
| 設置費用 | 固定式より約2割増 |
ただし、角度を変更できる架台は固定式に比べて設置費用が高くなります。
発電量が増える一方で設備費も増加するため、実際に導入する際には費用とのバランスを考える必要があります。
このように、単純にパネルを設置するだけでなく、雪の落ちやすさや季節に応じた角度を工夫することが、積雪地域での太陽光発電には重要であることが分かります。
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研究開始から16年以上、市役所では現在も年間約8,900kWhを発電
では、2009年から設置されている太陽光パネルは、その後どの程度発電しているのでしょうか。
江別市が公表した2025年度の実証研究報告書には、市役所本庁舎における年間発電量の推移がまとめられています。
主な年度を抜粋すると、次のようになります。
| 年度 | 年間発電量 |
|---|---|
| 2013年度 | 約8,679kWh |
| 2015年度 | 約9,089kWh |
| 2017年度 | 約9,235kWh |
| 2019年度 | 約9,293kWh |
| 2021年度 | 約9,662kWh |
| 2022年度 | 約9,333kWh |
| 2023年度 | 約7,230kWh ※ |
| 2024年度 | 約7,650kWh ※ |
| 2025年度 | 約8,875kWh ※ |
※2023年度・2024年度は機器の不具合による欠測があります。2025年度も3月分に一部欠測があるため、数値の単純比較には注意が必要です。
市役所本庁舎の太陽光発電設備は、設置当初の年間予想発電量が約8,500kWhでした。
これに対し、2025年度の記録は約8,875kWhで、当初の予想を約4.4%上回っています。
また、2013~2022年度の10年間では、年間発電量がおおむね8,700~9,700kWhの範囲で推移しています。
設置から16年以上が経過していますが、少なくとも市役所本庁舎では、現在も当初の予想を上回る発電量が記録されていることになります。
ただし、発電量は天候や日射量などによって変動するため、この数値だけでパネルの劣化がないと判断することはできません。
一方で設備の老朽化も いずみ野小学校隣地では2019年から発電データを取得できず
長年の研究で一定の成果が得られている一方、設備の老朽化という課題も明らかになっています。
2025年度の報告書によると、いずみ野小学校隣地では2019年に発電データを収集する専用端末が損傷しました。
そのため、2019年8月以降は発電量のデータを取得できておらず、現在は気温や日射量などの気象データのみを収集しています。
さらに、太陽光パネルで発電した電気を利用できる形に変換する「パワーコンディショナー」と呼ばれる機器にも故障が発生しています。
主な故障状況は次のとおりです。
| 時期 | 設備の状況 |
|---|---|
| 2019年度 | 発電データ収集用の専用端末が損傷 |
| 2021年度 | パワーコンディショナーの一部が損傷 |
| 2022年度 | 無停電電源装置が故障し停止 |
| 2024年度 | 別のパワーコンディショナーも損傷 |
| 2025年度 | 故障した設備の修繕ができない状態が継続 |
報告書では、これらの設備について、市の財政上の理由から当面は修繕費用を確保できず、発電データの収集が難しい状況が続く見込みであるとしています。
なお、発電データを取得できないことと、すべてのパネルが発電していないことは同じではありません。現在どの設備がどの程度稼働しているかについては、報告書からは確認できません。
市役所本庁舎では引き続き発電量の記録が行われており、2カ所の研究施設で状況が異なっています。
今後は設備の耐久性を追跡 研究は継続する方針
江別市では、2014年度までに雪の落ちやすさや設置角度などについて一定の研究成果を得たことから、2015年度以降はパネルや架台などの耐久性を確認する研究を続けています。
2025年度報告書では、今後も設備の損傷が発生することを想定しつつ、発電できなくなるような重大な損傷が生じるまで研究を継続する方針が示されています。
雪の多い北海道で太陽光発電をどのように活用できるのか。江別市で長年続けられてきた研究は、その設置方法や発電性能について、さまざまな知見を残してきました。
一方、研究開始から16年以上が経過した現在は、設備の故障によって一部のデータが取得できないなど、長期運用ならではの課題も生じています。
今後は、これまで得られた研究成果に加え、設備の耐久性や維持管理の状況についても注目されます。