江別市にある製紙工場『王子エフテックス江別工場』を取材する『えべつまちけんキッズ応援隊』に、えべナビも同行させていただきました。
↓その時の様子はこちら↓
取材に同行させて頂いた際、たいへん貴重な建物・遺構をたくさん王子エフテックスさんに見せていただいたので、まちけんキッズの記事とは別に、えべナビのリポートも追加したいと思います。
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もくじ
王子エフテックス江別工場に残る遺構
鉄道廃線跡と外国製古レール
王子エフテックス江別工場にはかつて江別駅から「王子製紙江別工場専用線」という貨物路線が延びていました。
鉄道廃線跡については以前取材させて頂き、その様子は以下の記事にまとめています。
今回は以前の取材では分からなかった箇所を工場の皆さんに紹介して頂きました。
こちらのカマボコ型屋根の右側に貨物専用ホームが残されているところは以前の取材でも紹介しました。
今回はその反対側にある柱が珍しいということで見させて頂きました。
柱に使用されているのは、なんと鉄道のレール!
古くなったレールを建物の部材に使用する例は鉄道施設にはよく見られますが、民間の工場にあるのは珍しいかもしれません。古くから鉄道が通っていた名残を感じさせますね。
鉄道のレールの側面には製造した会社や製造年が記載されています。
錆びついていたなかなか判読が難しいですが、以下のように書かれていました。
「CARNEGIE 1896 ||||||||| HANKAKU」
これはアメリカ・カーネギー社による1896年製造の古レールです。西暦の横に刻まれた縦線は製造月を表しており、9本あるので9月製造ということになります。また「HANKAKU」はレール発注者の表記で、これはかつて兵庫県に存在した阪鶴鉄道を表しています。
なぜ兵庫県の鉄道会社で使われたレールが北海道に?と思うところですが、中古の鉄道レールが払い下げられ、リサイクル品として日本各地で使われていたようです。日本人は昔からエコ感覚が優れていますよね。
このレールがアメリカ⇒関西⇒北海道と旅してきたレールかと思うと、とても感慨深いものがあります。
ちなみにこちらが貨物専用ホームの遺構。鉄道好き・廃線跡好きの方なら血湧き肉躍る気持ちが分かって頂けるのではと思います。
今回は特別にホームの上を歩かせて頂きました!これはすごい!
かつて貨物ホームだった床。その横には昔線路が延びていて貨物列車が行き交っていたのか…と歴史を想像するとさらに興奮してきますね。
貨物ホームの先にも遺構が残っているということなので、ホームを降りて先に進みます。
貨物線の車止めとして使用されていたものなのか、古レールと枕木で組んだものが残されています。
その裏側にはなんと、線路の一部がそのまま敷かれた状態で残されていました!これは貴重!
柵に使用されている古レール。サビが酷いですが、なんとなく読めそうな雰囲気。
画像修正して横にしてみました。一部分しか分からないので間違っているかもしれませんが字体から推測すると、
「6009 ILLINOIS STEELCo SOUTH」
と書かれているように見えます。これが正しければ、アメリカ・イリノイ州のイリノイ製鋼会社製の古レールということになりそうです。年代はおそらく1900年前後のもの。
江別市内で外国製古レールが見られる機会などそうそう無いので貴重ですが、純粋に100年以上前の輸入外国製レールとしてたいへん価値のある代物です。いつか1本1本調べ尽くしてみたいものです…。
大正時代?巨大レンガ倉庫
王子エフテックス江別工場の奥に佇む巨大レンガ倉庫。こちらは大正時代の建築ではないかとのこと。
歴史を感じさせるレンガと木造の窓枠。
なんと、レンガ倉庫の中も見学させて頂きました。
倉庫内天井の木組み。やや細めの木材が大正時代の雰囲気を思わせます。
石狩川沿いに残る江別レンガを使用した最古のレンガ倉庫
こちらのレンガ倉庫は工場の東端、石狩川と千歳川の合流地点にあたる川沿いに建っています。
先程見たレンガ倉庫とは違い、かなり高さのあるものが連なっています。
『江別ガイドブックシリーズⅠ史跡が語る江別の歩み(江別市教育委員会江別市郷土資料館 発行)』によると、この煉瓦倉庫は富士製紙工場(当時)創業の翌年1909年(明治42年)建築のものと推定されています。
野幌煉瓦を使用した現存する建物としては最古のものだそうで、歴史的にたいへん重要な建築物です。
巨大レンガ倉庫の近くにも、古そうなレンガ造りの建物が複数見られました。そのどれもが現役で使われているというもの驚きで、まさに今話題のSDGs的な取り組みを長年積み重ねている企業であると言えます。
もとは公道だった!?工場内の直線道路
ところで王子エフテックス江別工場の中央を走る道路(南東から北西にかけて真っ直ぐ延びる道路)がありますが、ここはかつて公道だったとのことです。
写真は件の中央道路から条丁目方向(会社通り・外輪船方向)を見た写真。横切っている橋は国道12号の新江別橋です。
現在はその新江別橋の南東側に王子エフテックス江別工場の門がありますが、昔はその門が無く普通の道路として通れたというのですから驚きです。
同じ場所から今度は北西方向(石狩大橋方向)を見る。
現在はどちらも工場が建っていますが、かつて公道だった頃、左側の敷地には王子製紙の社宅が立ち並んでいたようです。
江別市街地の古地図を確認
昭和25年(1950年)~昭和27年(1952年)頃の江別市街地の古地図。
会社通りから真っすぐ工場脇に道路が延びているのが分かります。
この道路が「一丁目通り」と呼ばれていたようです。
ちなみに、この古地図の時代は「北日本製紙工場」ですね。
現在(2023年)の江別市街地地図。道道1056号(江別長沼線)が工場を避けるように迂回しているのが分かります。
昭和以降の道路にも影響が及んでいたというのは大変驚きであり意外でした。
マルス券
最後に、王子エフテックスさんで製造されている特殊紙の一つをご紹介。
王子エフテックス江別工場では多くの特殊紙が製造されていることは前回の記事でもご紹介しました。
その中で「え!これも!?」と驚いたのが『マルス券』です。
JR北海道などにある「みどりの窓口」「指定券売機」で発券される”あの”切符です。このような特殊紙も製造されているんですね~。
ちなみに展示してあるマルス券は「東京→新富士 新幹線自由席特急回数券」というかなりマニアックなものでした。
以上、「えべナビ」視点での『王子エフテックス江別工場見学 with えべつまちけんキッズ応援隊』でした。
王子エフテックス江別工場の皆様にはたいへんお世話になりました。
また、えべつまちけんキッズ応援隊関係者の皆様にも色々ご協力頂きました。
この場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました!
「えべつまちけんキッズ応援隊」が取材した「王子エフテックス江別工場」については以下の記事をご参照ください。
王子エフテックス江別工場の場所アクセス地図
住所:〒067-0001 北海道江別市王子2−3−1