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江別と子どもの未来のために今日も奔走!江別神社宮司 内田悟さんインタビュー[江別の達人 Vol.5]

江別神社宮司 内田悟さん

江別駅前の萩ヶ丘に鎮座し、まちに住む人々の心の拠り所である江別神社。宮司をお勤めの内田悟様にお話を伺いました。

現在は「江別駅周辺再開発事業推進会社 有限会社みらい」の代表取締役社長も務める内田宮司。地域における神社の役割を超えた「まちづくり」への熱い思いをはじめ、御神水にまつわるエピソード、世界一周の旅での体験、そして人生観など、多岐にわたるお話を聞くことができました。

『江別の達人』とは?

「江別の達人」は、江別在住または江別にゆかりのある方へお話を伺う「えべナビ!」のインタビュー企画です。江別での現在の活動から、江別にまつわる歴史や思い出話、未来の展望などをお聞きし、江別の楽しさ素晴らしさを再発見します!

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ご神水の復活で神社がより身近な存在に

江別神社 御神水

「コーヒーをご神水で淹れると、本当にまろやかでおいしいんですよ」と宮司がおっしゃるように、その味わいのすばらしさには、近隣の飲食店オーナーたちがいち早く気づいたそうです。

「最初にやま六鮨のマスターから『ご神水でご飯を炊いてみなさい、全然違うから』と言われて試したら、本当にご飯の味がまるで違った」と、宮司は改めてご神水のおいしさを実感しました。

実際に行った水質検査の数値からも、ご神水は質の高い軟水であることが確認されており、酒造りにも最適な水だといいます。

江別産特別純米酒 瑞穂のしずくをつくる小林酒造が、ご神水を使った「瑞穂のしずく無濾過生原酒」を販売した時には大人気で即完売となりました。

宮司は小林酒造の杜氏さんにお会いした際、「ご神水は酒造りにぴったりの水ですよ」と言われ、お酒の味を決めるのは水であると教わったそうです。

また「そば屋の店主からも『蕎麦のおいしさは蕎麦粉ではなく水で決まるんだよ』と言われました」と語り、飲食店でご神水を活用してもらうことで、江別の新たなメニューが生まれ、観光にもつながるのは素晴らしいことだと考えています。

 

「瑞穂のしずく」海外進出

日本酒 瑞穂のしずく2023年

小林酒造では「瑞穂のしずく」をタイに輸出する事業にも取り組んでいるそうです。ご神水について「どうぞ自由に使ってください」と全面協力を申し出ている宮司は、次のように話してくれました。

「タイで飲食業を営む知人がいて、ショッピングモールのオープンに合わせて北海道の物産展を開きたいと言うんです。協力しなければと思っていて、もしそうしたご縁で江別の地酒がタイで販売されるようになったら嬉しいですよね。ちょっと夢があるんです」

災害に備えるために復活した井戸ですが、宮司は「できれば災害はない方がいい。むしろ普段からみんなに使ってもらう方がいいですよ」と語ります。現在、ご神水はえべつ観光協会のパンフレットにも掲載され、江別の宝として広く知られるようになりました。

週末には瓶を何本も持って水を汲みに来る人や、毎日のように訪れる人もいるといい、ご神水を求める参拝客の姿が増えています。
「人々がちょっとしたことにも『ありがたいな』と思って手を合わせられると、心が安定して豊かに暮らせるんですよ」

コロナ禍では元旦の参拝者は減少しましたが、日常的に神社へ参拝する人はむしろ増えたそうです。
「どうにもならないウイルスに対して、祈りの場って必要なんだと感じました。手を合わせるだけで少し心が落ち着く。神社は地域に根ざし、強い宗教性があるわけではなく、お祭りでみんながワクワクする、そういう存在なんです。これは今も昔も変わりません」

ご神水をきっかけに、江別神社がより身近な存在となったことは本当にありがたいことだと感じました。

 

御神水が給水停止に…復活へ奔走

しかし、復活から約4年後の2022年夏、水の色が悪化し給水を停止せざるを得なくなりました。その間も多くの人が毎日のように水を汲みに訪れ、「いつになったら汲めますか?」と問い合わせが絶えなかったといいます。
「みんな待ってくれている。それだけ多くの人に利用されていたんだと気づきました」と宮司は振り返ります。

濾過器を設置して対応したものの、濁りの原因は分からず、宮司の心身に大きな負担となりました。江別神社の井戸は、これまで一万本以上の井戸を掘った業者からも「震度7の地震でも大丈夫な、トップクラスの水源」と評価されていたほどでした。

「心臓病があるのですが、昨年のお祭りの朝に救急搬送され、死を覚悟しました。忙しさのせいと言われましたが、自分ではご神水の問題が原因だと分かっていました」と語ります。搬送中は全身が苦しく、死を目前に恐怖で鳥肌が立ったといいます。

「費用はかかるけれど、原因を明らかにしようと思ったのは、能登の被害で今も飲料水に困っているという報道を見たからです。電気や火がなくても困りますが、命に直結するのは水。水があるのに何もしないのはよくないと思ったんです」と宮司は語ります。

原因の解明には1年を要しましたが、近くの高架線の影響で井戸の管に電流が流れ、穴が空いていたことが判明しました。穴を塞ぎ、電気を通さない管に交換する工事を実施。設備が整い、2025年には再びご神水を提供できる見通しとなり、宮司にとって大きな喜びの一つとなりました。

※2025年9月現在、ご神水は国の基準に適合させるための調整が続いており、提供は一時休止中です。宮司は「必ず復活させる」と強い決意を語っています。

 

残りの人生は地域の「こどもの笑顔」のために

えべつみらいビル・子供盆踊り大会

神社の務めは息子さんに引き継ぎ、「これから自分は何をすべきか」がテーマだったという宮司。ちょうどその頃、駅前再開発事業を担う会社から社長就任を依頼され、有限会社みらいの代表取締役に就きました。
「まちづくりに貢献したいと考え、子どもに着目しました。子どもがまちにいることは本当に大切。これがすべての始まりです」と語ります。

江別地区には新しい保育園ができ、子どもの姿が増えました。園児たちが散歩する姿は近隣住民の癒やしとなり、神社にもほぼ毎日訪れます。宮司は子どもたちとの触れ合いを大切にし、秋には境内の栗を用意して園児たちに拾わせる工夫もしました。家庭で茹でて食べてもらうと、保護者からも喜ばれたそうです。

こうした経験から「この子たちを喜ばせたい」と始めたのが「こどもの笑顔事業」です。地域貢献の一環としてえべつみらいビルで盆踊り大会を開催。縁日やキッチンカー、ステージイベントも加え、子どもたちの笑顔で大盛況となりました。
「親が『江別っていいまちだ』と思えば、人口も増えるかもしれない。身近な取り組みが積み重なれば、良い循環につながります」と話します。

ハロウィンには社務所を飾り付け、自らマントを着て園児を迎えました。クリスマスでは園児たちが係を決めてジングルベルを鳴らし、整列して待つ姿に感動。節分の豆まきでは、勇敢に豆を投げる子、恐る恐る壁に張り付く子、泣き出す子などさまざまな様子に、宮司も笑顔を見せます。
「子どもの笑顔がまちにあるだけで、住む人も幸せになります。貢献しているというより、むしろ元気をもらっているんです」

 

神社とは人口に膾炙する存在。ハレの日とケの日「なじみのよい地域社会」

それにしても、神社でハロウィンやクリスマスとは、おおらかですよね。

「日本人にとってクリスマスは宗教というより、家族でごちそうやケーキを楽しみ、プレゼントをもらう日ですよね。私の家も神社でしたが、子どもの頃にプレゼントやケーキがなかったことはありませんでした。自分の子どもにも普通の家庭と同じようにクリスマスをしてきました。人口に膾炙する(広く行き渡る)という言葉がありますが、神社はまさに地域に染み込んでいる存在。最も地域に根ざしたコミュニティの一つだと思います」

盆踊りや節分なども「みんなでやろう」と声をかけ、地域の人々と一緒に続けています。
「私が何かやりたいと言うと、昔から住んでいる人が多いので皆が手を貸してくれる。そうやって“なじみのよい地域社会”ができるのが大切なんです」

「まちおこしというとイベントに目が行きがちですが、祭りはハレの日。大事なのは圧倒的に多いケの日を気持ちよく過ごせる地域をつくること。それが本当のまちおこしです」

“なじむ”とは互いに親しむこと。同じ地域に住んでいても、時間をかけて関係が深まります。
「小さな地域に根を張り、日々の暮らしで少しずつ馴染んでいく。神社は個々の信仰を超えて全てを受け入れる場所です。だから宗派を問わず、さまざまな人とお付き合いがあります」

「江別神社のお祭りや手伝いは宗教を超えて、日本の伝統行事そのもの。地域の人たちが寛容であることが、まちづくりにつながります」

一方で「なじみのよい地域」は、外から見ると排他的に感じられることもあると宮司は言います。
「本質というか、本性がわかっているから付き合えるんです。昔から皆ごく普通の人たちばかりで、人柄が悪くなければ誰とでもやっていける。私の父もそういう人でした」

そして話題は、お父様の死や「自分に満足して生きる」という人生観へと移っていきました。

 

わたしは死ぬのが楽しみだ

「わたしは死ぬのがたのしみだ」内田悟著

「父は心臓病のあと喉頭がん、最後は脳出血と、いわゆる三大成人病を次々と患って亡くなりました。ただ、床屋に行き、晩酌をして好きな酒を飲んだあと、トイレの前で倒れて病院へ運ばれた。そのときの父の顔がとても穏やかで、安らかな表情でした。あれを見て『これでいいんだ』と安心したんです。そういう死に方って大事だなと思います」

お父様との突然の別れや、自身の持病・老いを受け入れた宮司は、生と死に向き合う静かな覚悟を語ります。
「私は宗教家の端くれとして、死に際でジタバタしたくない。人は必ず死ぬのだから、それを受け入れて、生きている間にちゃんとやり切り、満足した気持ちで最期を迎えたい」と。

その思いを込めたエッセイ集『わたしは死ぬのが楽しみだ』は、平成28年に刊行されました。50代のとき、自分の歩みと紆余曲折をまとめたいと考え、奥様の後押しで実現したものです。

「普通はタイミングが来てもぐずぐずして終わってしまう。自分に満足していないとストレスやイライラがたまる。自分に満足している状態はとても大切だ」と宮司は語ります。

本書には、宮司の考え方や生き方の根底をなす経験が綴られています。

 

「人間の本性」「宗教の本質」とは?世界を巡った一人旅が人生観を大きく変える

江別神社宮司 内田悟さん

宮司の人生観を大きく変えたのは「世界一人旅」でした。
神主として宗教の世界に生きる自分を試す挑戦で、サラリーマン時代に貯めたお金を使い「親父に『1か月だけ時間をください』とお願いして」旅に出たそうです。帰国したのは結納の2日前だったと笑って振り返ります。

「人は何を信じても、根っこの部分で共通するものがあるのではないか。それが『人間の本性』ではないか。それを確かめたかった」と語ります。

旅先は東南アジアの仏教国、中近東のイスラム圏、東欧の社会主義国など。リュックに寝袋を詰め、文化も宗教も異なる国々を巡りました。
「英語もできなかったのに、英語が通じない国ばかり行って本当に大変でした」と苦笑しますが、その経験が今の自分を支えているといいます。

印象深い出来事のひとつはパキスタンでの会話。敬虔なイスラム教徒でも金持ちは酒を隠れて飲み、日本の商社から入手する、と聞かされ驚いたそうです。
「仏教でもお酒を『般若湯(はんにゃとう)』と呼んで飲んでいた。宗教や国家が禁じても、人は欲求を満たす抜け道を作る。そこに人間共通の本性を感じました」

また、東欧では国家が宗教を認めなくても、立派な教会が国の管理下で守られていることに気づきました。宗教は形を変えながらも、人々の生活に深く根付いていると実感したといいます。

 

人間は決して平等ではない

パキスタンで親しくなった男性に写真を送ろうとメモを渡したとき、彼が読み書きできないと知り衝撃を受けました。
「人間は平等じゃない」と宮司は率直に語ります。

江別高校卒業後、東京の大学で出会ったアルバイト先の先輩からもそれを学びました。中卒で集団就職してきた彼は字もろくに書けませんでしたが、必死に働き店を持つ夢を追っていました。
「学校にいると差は見えにくい。でも社会に出ると能力の差は歴然。それでも『生きていてよかった』『幸せだ』と感じる権利は誰にも平等にある」と気づいたといいます。

 

人が幸福に生きるための課題とは

「人間の本性を知ること。そして嫉妬心や劣等感をどう隠し、どう克服するかが人生の大きなテーマです」と宮司。

中学時代は勉強もスポーツも上位でしたが、「自分より優れた相手に嫉妬し、自己嫌悪に陥った」と振り返ります。
「嫉妬心や劣等感は誰にでもある。だが意識して向き合い、乗り越える努力をするかどうかで差がつく」といいます。

50代になって「死ぬまでに劣等感を払拭したい」と英語学習を始めました。きっかけは、アルバイトの高校生が英検3級を勉強している姿を見たこと。中学レベルの内容が理解でき、「自分も挑戦できる」と思ったそうです。

その後、準2級にも挑戦し、人生で初めて受験勉強のプレッシャーを経験しながら合格しました。
「成果は自己満足程度。でも一昨年から毎日10分の英語学習を続けています」と笑います。これまでに訪れた19か国に加え、もう1か国訪れるのが目標だそうです。

「嫉妬心を良い方向に変え、劣等感を乗り越えられれば、人としての人格が磨かれる。60歳を過ぎてから、人に嫉妬しなくなった。そう気づけたこと自体が幸せだと思います」

宮司は周囲の人間関係への感謝を口にしつつ、「自分には目標があり、叶えたい未来がある。それが人生を輝かせ、幸せの源になる」と語りました。

 

生まれ育った江別のために

江別神社秋季例大祭 神輿渡御

「私の目標は、この江別神社を守ること。それが一番の仕事です」と語る宮司。健康面を考え「いろんなことに首を突っ込むのはやめよう」と思いつつも、最近では日本ハム二軍誘致の要望書を地域の声をまとめて役所に提出しました。

生まれ育った江別のためにできることを常に考え、これまで多くの取り組みを行ってきました。

その一つが少子化対策で始めた「出会いの広場」。5年間で約60組のカップルが成立し、うち6組が結婚。子どもも誕生しました。人と人をつなぐのは宮司という立場柄、昔から頼まれてきたことで、それを機会としてまとめたのがこの取り組みでした。コロナで中断しましたが「これからも頼まれれば続けていく。そういう仕事なんです」と話します。

また、江別市かわまちづくり協議会の委員を務めた際には、千歳川堤防の改修に合わせ、桜並木やサイクリングロード、公園整備を提案。
「夕日が川に沈む景色を見ながら散歩できたらいい」と願い、国交省の「かわまちづくり支援制度」登録に結びつきました。

「社長の任期を終えるまでは、とりあえず元気で酒が飲める体でいたい」と笑う宮司。千歳川沿いに実現した満開の桜の下で、仲間たちと「瑞穂のしずく」で乾杯する日を心待ちにしています。

 

※インタビューは2024年11月に行いました。内容が現在の状況と異なる場合があります。

※以下のリンク先では、ネットラジオ「BRICK RADIO」にて内田悟宮司の対談の内容・音声(2021年1月6日配信)を聞くことができます。

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えべナビ編集部

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